こんにちは、インフラ系エンジニア専門の転職エージェントの中の人です。
インフラエンジニアなどを目指す際に、Linuxについての知識やスキルは非常に重要です。
Linux技術を証明する資格として、「LPIC(エルピック)」と「LinuC(リナック)」がありますが、それぞれの資格には、共通点があれば、違いもあります。ではLPICとLinuCは、「難易度や評価はどう違うのでしょうか?」、また、「どちらを取るべきなのでしょうか?」。
今回はLinux技術者認定の資格取得を考えている方に向けて、非常に似ていますが、異なる資格の「LPIC」、「LinuC」について、共通点や違いを徹底解説し、どっちを取るべきか?などを説明します。
LPICとLinuCは、難易度も評価も、ほぼ同じ(変わらない)
Linux技術者認定のLPIC(Linux Professional Institute Certification)と、LinuC(Linux Professional Certification)は、どちらもLinuxスキルを証明する資格ですが、試験内容、難易度、評価において、大きな違いはありません。
特に多くの人が気にする「難易度」や「評価」は、ほぼ同じです。むしろ「実質的に、変わらない」と考えた方が良いくらいです。
もちろん、会社によっては「LPICを奨励」、「LinuCを推奨」と分かれていることはありますが、これは教育方針によるものです。資格そのものの評価は同じです。
実際にLPICを奨励している会社でも、LinuCを同等に評価しています。「LPICは評価するけど、LinuCは評価しない」といったケースはありません。
また「LPICにして後悔した」、「LinuCにすればよかった」といった意見も、ほとんど聞かれません。どちらを選んでも評価に影響はないので、あまり悩まずに、早く勉強を始めることも大事です。
ただし勉強を始める前に、「LPIC」と「LinuC」のどちらにするかを決めないといけないのも確かです。下記からはLPICとLinuCについて、詳細を説明します。
LPICとLinuCの概要と違い
LPICとLinuCは、両方とも「Linux技術者認定試験」です。まずはLinux技術者認定試験の概要から説明します。
Linux技術者認定試験の概要
Linux技術者試験には、代表的な資格として「LPIC」と「LinuC」の2つがあります。その他に「Red Hat認定資格」や「CompTIA Linux+」などもありますが、知名度や評価、勉強しやすさなどを考えると、あまりおすすめはできません。
そのため、Linux技術者試験を受検するなら、「LPIC」と「LinuC」のいずれか一つを選択すると良いです。
また、Linux技術者認定の「LPIC」と「LinuC」の概要は、少々端折って、簡単に説明すると、下記図のようになります。
LPICとLinuCの概要の違い
下記からは「LPICとLinuCの、概要の違いについて」整理していきます。
LPIC | LinuC | |
実施団体 | LPI(Linux Professional Institute) | LPI-Japan |
実施団体の本部 | カナダ | 日本 |
実施団体の主な提供試験 | Linux Essentials:ITSSレベル0 LPIC Level1:ITSSレベル1 LPIC Level2:ITSSレベル2 LPIC Level3:ITSSレベル3 | LinuC レベル1:ITSSレベル1 LinuC レベル2:ITSSレベル2 LinuC レベル3:ITSSレベル3 LinuC システムアーキテクト:(新設のためITSSレベル未定) |
試験開始時期 | 2001年 | 2018年 |
累計認定者数 | 近年公表なし | 約40,000人(2020年時点) |
試験対象エリア | グローバル(180か国以上) | 主に日本 |
試験問題の言語 | 日本語、英語、ドイツ語など、9言語 | 日本語、英語 |
LPICとLinuCの共通点
LPICとLinuCのどちらかを迷う方は、ほとんどの方が「level1試験の受検前」だと思いますので、LPIC Level1とLinuC レベル1の共通点を、下記に整理します。まずは共通点を流し読みしてください。
LPIC level1 | LinuC レベル1 | |
認定要件 | 101試験、102試験の両方に合格すること | 101試験、102試験の両方に合格すること |
試験時間 | 各試験90分 | 各試験90分 |
出題数 | 各試験約60問 | 各試験約60問 |
出題形式 | CBT方式(マウス選択問題、キーボード入力問題) | CBT方式(マウス選択問題、キーボード入力問題) |
合格ライン | 約65%程度 | 約65%程度 |
合格率 | 非公開(60%前後の想定) | 非公開(60%前後の想定) |
受検料 | 101試験、102試験ともに、各16,500円(税込み) | 101試験、102試験ともに、各16,500円(税込み) |
難易度 | ITSSレベル1(初級) | ITSSレベル1(初級) |
有効期限 | なし(有意性期限は5年) | なし(有意性期限は5年) |
試験会場 | 全国の試験センター(ピアソンVUE会場) | 全国の試験センター(ピアソンVUE会場) |
試験日 | 毎日(試験会場の予約が取れる日はいつでも) | 毎日(試験会場の予約が取れる日はいつでも) |
■関連記事:【まとめ】LPICとは?資格の取得メリット、難易度、勉強方法などを解説
■関連記事:Linux資格のLinuCとは、取得メリット、種類・難易度、勉強方法等を解説
LPICとLinuCの試験範囲の違い
試験範囲についても、まず詳しく知りたいのは「level1の範囲」だと思いますので、LPIC Level1とLinuC レベル1の試験範囲の違いを、下記に整理します。
LPIC Level1と、LinuCレベル1の、試験範囲の違い
下記のオレンジマーカー部分が、試験範囲の違いです。
LPIC level1 | LinuC レベル1 | |
101試験 | 101:システムアーキテクチャ 102:Linuxのインストールとパッケージ管理 103:GNUとUnixコマンド 104:デバイス、Linuxファイルシステム、ファイルシステム階層基準 | 1.01:Linuxのインストールと仮想マシン・コンテナの利用 1.02:ファイル・ディレクトリの操作と管理 1.03:GNUとUnixのコマンド 1.04:リポジトリとパッケージ管理 1.05:ハードウェア、ディスク、パーティション、ファイルシステム |
102試験 | 105:シェル、スクリプト 106:ユーザーインターフェースとデスクトップ 107:管理タスク 108:必須システムサービス 109:ネットワークの基礎 110:セキュリティ | 1.06:シェルおよびスクリプト 1.07:ネットワークの基礎 1.08:システム管理 1.09:重要なシステムサービス 1.10:セキュリティ 1.11:オープンソースの文化 |
上記を見て、違いが少々わかりにくいかも知れませんが、9割強ほど試験範囲が同じです。簡単に説明すると、試験範囲は、下記が異なります。
■LPIC Level1と、LinuC レベル1の、試験範囲の違い:
・LPICにある試験範囲:ユーザーインターフェースとデスクトップ(106)
・LinuCにある試験範囲:仮想マシン・コンテナ(1.01の一部)、オープンソース(1.11)
ゆえに、初学者に一言で比較説明するなら、LPICは「クライアントサーバーシステム(クラサバ)を少し多めに学ぶ」、LinuCは「仮想化を少し多めに学ぶ」、と考えてもよいかと思います。
ただ、試験範囲に少々違いはあるものの、大枠はほぼ同じです。また、試験範囲が異なる部分も、LPIC・LinuCの公式が発表している「試験の重要度」は低いので、それ程大きな違いにはならないでしょう。
またLPIC/LinuC-1の問題を見てみたい方は、「LPIC level1の頻出過去問、試験問題(コマ門あり)とおすすめ問題集・参考書」に記載しています。
■関連記事:LPIC101とは、概要から未経験2週間で合格した勉強法までを解説
■関連記事:LPIC102とは、概要から未経験2週間弱で合格した勉強法までを解説
LPICとLinuCの難易度の違い、どちらが取得しやすい?
LPICとLinuCの、難易度の違い:level1、level2、level3は、取得しやすさはほぼ変わらない
LPICとLinuCの難易度は、主要資格である「level1(レベル1)」、「level2(レベル2)」、「level3(レベル3)」は、いずれもほぼ同じです。どちらが取得しやすいというのもありません。仮にあったとしても、誤差の範囲でしょう。
また、難易度だけでなく、LPICとLinuCは、各レベルでの試験内容もあまり変わりません。レベル1ではLinuxの基本操作や、ネットワーク・セキュリティの基礎知識、レベル2ではサーバーの構築・管理、レベル3では高度なセキュリティや仮想化技術などが問われます。しかし試験範囲や内容に大きな違いはなく、学習時間や対策も、ほぼ同じと考えてよいです。
LPICとLinuCの、評価の違い:level1、level2、level3は、ほぼ変わらない
両資格とも、取得後の評価もほぼ同じです。
LPICとLinuCでは、「level1、level2、level3」といった主要資格は難易度、評価ともに変わりません。ゆえに、どちらの資格を選んでも、Linux技術者としてのスキル証明に役立ちます。
一例として、会社はLPICはLinuC取得者には「資格手当」を設けていることがありますが、LPICとLinuCの資格手当金額が異なるケースも見たことはありません。
一方で、LPICとLinuCは、「主要資格以外」の所で明確に違いがありますので、下記から説明していきます。
LPICとLinuCの難易度の違い(主要資格以外)
LPICとLinuCの違いは、主要資格以外の部分で違いがあります。
■LPICとLinuCの難易度の違い:
・LPICは、入門資格の「Linux Essentials」がある
・LinuCには、上位資格の「LinuC システムアーキテクト」がある
わかりやすく図で説明すると、下記赤線部分が、「LPICのみの資格」また「LinuCのみの資格」です。
ゆえに、「入門レベルから勉強したい」という方には、Linux EssentialsのLPICを選択し、「将来的に、Linuxのアーキテクト資格を視野に入れたい」という方には、LinuCシステムアーキテクトのLinuCを選択するという考え方もできます。
【まとめ】LPICとLinuCの違い
LPICとLinuCの違い①:Linux Essentialsと、LinuCシステムアーキテクト試験の存在
まずLPICとLinuCの大きな違いとしては、入門資格の「Linux Essentials」と、上位資格の「LinuCシステムアーキテクト」の有無があります。
特に、上位資格の「LinuCシステムアーキテクト」の有無は、両資格の違いとして大きいでしょう。LPICとLinuCは、資格の最高峰が異なるため、人によって「好みの有無が、はっきり分かれる所」だと思います。
例えば、下記のような考え方もできるかと思います。
■LPICに向いている人:
・LPIC Level3まで取得したら、LPICの最高峰到達と考え、その後は他の興味がある資格(AWS認定資格など)を取得して、さらにスキルの幅を広げたい人。
・Linuxの基礎から上級レベルまで学び、その後は別の技術に積極的に挑戦したい人。
■LinuCに向いている人:
・LinuCレベル3にとどまらず、さらに上位資格のLinuCシステムアーキテクトの取得まで視野に入れたい人。
・Linuxにより特化して、さらなる専門性を追求し、システムアーキテクトとしての技術を深めたい人。
LPICとLinuCの違い②:知名度
LPICとLinuCの知名度を測定するために、LPICとLinuCを「大手求人サイト6社」で検索をしてみた結果、2024年9月現在では、ヒット数は下記となりました。
検索ヒット数は「LPIC」が多く、「LinuC」と比べて、約2倍の差がありました。
LPICの方が歴史(運営歴)が長いため、2024年の日本においても、知名度は「LPIC」の方が高いと考えられます。
LPICとLinuCの違い③:試験の運営歴
LPICとLinuCの明確な違いとして、試験の運営歴もあります。
■試験運営歴:
・LPIC:2001年から運営開始
・LinuC:2018年から運営開始
LPICを運営するLPI(Linux Professional Institute)は、2001年から世界中で運営が開始されており、LPICは20年以上の歴史と安定感があります。
一方で、LinuCは2018年から運営が開始されています。LPICと比べて比較的新しい資格ですが、日本市場に特化することで、日本市場で伸びている資格でもあります。
昔からの安定感を好みLPICを選ぶか、現在伸びている日本市場特化を好みLinuCを選ぶかは、好みの問題だと思います。
LPICとLinuCの違い④:試験の対象範囲
■試験の対象範囲:
・LPIC:グローバル(世界180か国以上)
・LinuC:日本国内を主体
LPICは対象範囲がグローバルですので、国際的な認知が高い資格です。いわばLPICは、国際標準の資格でしょう。
一方でLinuCの対象範囲は、日本国内向けですので、日本国内の認知に特化しています。
将来的に、グローバルでの仕事や、外資系への転職を考えるのであれば、LPICに軍配が上がるでしょう。
LPICとLinuCはどっちがいいの?
LPICとLinuCは、受検料も同じ、難易度も評価もほぼ同じ資格です。どっちがよいか?は非常に悩ましい所でしょう。
今回は、「LPICだけの特徴」と「LinuCだけの特徴」をもとに、どちらがよいのか?を整理していきます。
■LPICだけの特徴:
・最高峰の資格は、LPIC level3(ITSSレベル3)
・知名度が非常に高い
・試験の運営歴が長いため、信頼性が高い
・対象がグローバルで、国際標準の資格
↓
■LPICに向いている人:
・Linuxは、ITSSレベル3相当の資格で十分であり、Linux以外の技術も、早く学びたい人
・知名度の高さがあることで、企業からの評価も安定していると、安心感を感じる人
・試験の運営歴の長さ、国際標準資格に魅力を感じ、特にグローバル環境や外資系での就業を視野に入れる人
■LinuCだけの特徴:
・最高峰の資格は、LinuC システムアーキテクト(ITSSレベル不明、3-4程度になると想定)
・日本市場に特化した資格
・学ぶ内容は、仮想化環境が少し多い
↓
■LinuCに向いている人:
・Linuxにおいて、ITSSレベル3以上の資格取得を検討している人
・日本市場でのキャリアを重視し、日本市場のみに完全特化させたい人
・仮想技術に興味があり、仮想化環境を多めに学びたい人
LPIC、LinuCの取得メリットは?
エンジニアは実務経験が最重要であるため、LPICやLinuCを「意味ない」という人もいます。
ただし、Linuxスキルを必須とする「インフラエンジニア」や「サーバーエンジニア」などにとっては、有効な資格です。特にスキルの証明が難しい「初級から中級のエンジニア」にとっては、非常に有効な資格です。
下記からはLPICやLinuCの取得メリットを説明していきます。
LPIC、LinuCの取得メリット①:就職、転職に有利
LPICやLinuCの資格取得は「就職」や「転職」において、有利に働きます。特に未経験者や微経験者には非常に有効です。
実務経験がなくとも、資格の有無で「知識の証明」ができますし、またエンジニアとして成長したい熱意をアピールすることができます。
実際に、LPICやLinuCなどを事前に取得していないと、選考に進めない求人も多いです。
LPIC、LinuCの取得メリット②:スキルアップ、キャリアアップに有利
LPICやLinuCの資格取得は「スキルアップ」や「キャリアアップ」にても有効です。
スキルアップできる仕事に配属されるには、難易度が高い仕事に対応できる「知識の証明」が必要です。資格を取得することで、難易度が高い仕事に携わることができ、結果的にキャリアアップにつながります。
LPIC、LinuCの取得メリット③:年収アップに有利
LPICやLinuCの資格取得は「年収アップ」を目指すためにも有効です。
資格を取ったタイミングでは、「資格手当の支給が増える」くらいですが、資格を取ることで難易度が高い仕事に携わり、年収を上げることができます。
また、資格を取得して転職をすることで、より年収レンジが高い会社を目指すこともでき、年収アップにも有効です。
あわせて、LPICやLinuCの資格取得メリットは、「LPIC(LinuC)は意味ない?役に立つ?取得メリットとは」に詳しく記載しています。
さいごに:LPICもLinuCも、どちらも役に立つ資格
LPICとLinuCは非常に似ている資格ですが、エンジニアとしてのキャリア形成に、どちらも役に立つ資格です。
ただし、LPICかLinuCか、どちらか一つ取ればOKです(両方とっても、意味はありません)。どちらか一つを選択し、エンジニアとしてのキャリアアップや年収アップ、また転職成功につなげていただければ幸いです。
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