こんにちは、インフラ系エンジニア専門の転職エージェントの中の人です。
インフラエンジニアを目指す未経験者やIT初心者の方などが取得するLPIC試験の「LPIC-102」とはどのような内容、難易度で、どのような勉強法がスムーズなのでしょうか。
今回はLPIC102試験の概要から、未経験独学で、2週間弱で合格した勉強方法までを解説します。
LPIC102試験とは、101との違い
まずLPIC(エルピック)はLinux Professional Institute Certification の略であり、Linuxのプロフェッショナル認定を行う団体であるLinux Professional Institute (LPI)が認定する資格です。
LPIC level1は、サーバOSでもっとも大きなシェアを持つ「Linux」においての「システム管理」についての技術知識を問う資格であり、「LPIC101試験」と「LPIC102試験」の両方に合格した際に、LPIC level1合格となります
その中でも、LPIC101と102の違いとしては、試験範囲が異なる以外はそれ程大きな違いはなく、個人的な印象としては、合格率も難易度もそれほど大きな差はないと思います。あえて言えば、101試験の方がやや暗記すべき量が多い気がする、102試験の方がやや理解が必要な内容が多い気がする、という程度であり、必要勉強時間としてもそれほど変わらない印象です。
またこちらも個人的な印象ではありますが、101試験よりも102試験の方が個人的には面白く勉強できたかな、と考えています。
LPIC101と102、どっちが難しい?どっちから受けたほうがいい?
上記で説明しましたが、難易度レベルは101試験も102試験も、ほぼ変わらないと思います。ただし、101試験であれば、出題範囲の「システムアーキテクチャ」や、102試験であれば、出題範囲の「シェルとシェルスクリプト」「ネットワークの基礎」「セキュリティ」については、人によって少々好き嫌い(得意、苦手)があるようにも思いますので、得意と思える項目が多い試験の方が、やさしいと感じる印象です。
ただし、101試験と102試験のどちらから先に受けた方がよいか?という所で言うと、私は「101試験を先に受けた方がよい」と考えます。101試験の内容が102試験でも一部出題されるためです(私が102試験を受験した際には、101試験の内容が2問出題されました)。
仮に2問程度だったとしても、1-2問の正解で合否が分かれる可能性を考えると、やはり101試験から勉強し、受験する方がよいかと思います。
では、LPIC102の合格点、合格難易度はどうでしょうか?
下記からは、合格点、合格難易度について説明します。
LPIC102の合格点、合格難易度
LPIC102試験の合格点は、200~800点中500点以上で合格となり、LPIC101試験と同じです。
合格難易度としても、LPIC level1自体が、ITスキル標準(ITSS:難易度をレベル1~レベル7までで分類)で、一番やさしいレベル1の「エントリーレベル(IT企業における実務未経験者や新入社員など該当)」ですので、IT未経験者や初心者の方でも、勉強時間をしっかり確保すれば(心が折れなければ)取得は問題なく可能かと思います。
LPIC102の試験範囲
LPIC level1 102試験(Ver5.0)の試験範囲は、LPIC運営団体LPIのwebサイトにも記載がありますが、下記となります(試験範囲は変わる事がありますので、LPIのwebサイトを確認すると、間違いありません)。
■トピック105:シェル、スクリプト
-シェル環境をカスタマイズして使用する
-簡単なスクリプトをカスタマイズする
■トピック106:ユーザーインターフェースとデスクトップ
-X11のインストールと設定
-グラフィカルデスクトップ
-アクセシビリティ
■トピック107:管理タスク
-ユーザーおよびグループアカウントと関連するシステムファイルを管理する
-ジョブのスケジュール設定によるシステム管理タスクの自動化
-ローカリゼーションと国際化
■トピック108:必須システムサービス
-システム時刻を管理する
-システムロギング
-メール転送エージェント(MTA)の基本
-プリンタの管理と印刷
■トピック109:ネットワークの基礎
-インターネットプトロコルの基礎
-基本的なネットワーク構成
-基本的なネットワークのトラブルシューティング
-クライアント側のDNSを設定する
■トピック110:セキュリティ
-セキュリティ管理タスクを実行する
-ホストのセキュリティを設定する
-暗号化によるデータの保護
https://learning.lpi.org/ja/learning-materials/102-500/
LPIC102は、上記の範囲から「60問」出題され、おおよそ65%の正答(60問中、約40問ほどの正答)で合格となります。
※LPICの得点計算は少々複雑ですが、簡単に言うと「200点~800点の間」で点数がつけられ、LPIC101は「500点以上で合格」となります。
また、受験時間は90分であり、60問を90分で解答すると考えると、「90分は短い」と感じるかもしれませんが、試験対策をしていると、そこそこ見た事があるような問題が出てくると思いますので、時間は結構余る傾向があると思います(私の場合は、LPIC102は、40分くらい、時間が余りました)。
LPIC102の受験料
LPIC102の受験料は、LPIC101と同じ値段の15,000円(税別)です。つまり、LPIC level1取得には、101試験と102試験の両試験を一発合格でも、30,000円(税別)が受験料として発生します。
金額としては高い気がしますが、エンジニアとして就業する場合は、LPIC取得は30,000円(税別)どころではない価値があると思います。
LPIC102の勉強時間・期間と、私の合格までの勉強時間・期間
LPIC102の勉強時間や期間は、人によって様々です。エンジニア経験があれば、短い勉強時間・期間で合格できると思いますし、完全に未経験であれば、少々長めの時間が必要になると思います。
LPIC102の勉強時間は、LPI101 試験に合格している場合は、「エンジニア未経験者は、勉強時間50~100時間(2週間~2ヵ月程度)」、「日頃にLinuxを使っているエンジニア経験者は、勉強時間20~40時間(1ヵ月程度)」ぐらいと捉えられることが多いと思います。
参考程度までですが、非エンジニア(エンジニア経験無し)の私は、LPIC level1を1ヵ月100時間で取得しようと考え、LPIC 101試験を「50時間(2週間)の学習」720点で合格したため、102試験は少し手を抜いて、「44時間(12日間)の学習」で受験し、102試験は590点で合格しました(少々ギリギリな点数で、101試験と異なり手を抜いてしまったので、反省しています)。
もちろん、私よりももっと短時間で合格できる人も、もう少し時間がかかる人もいると思いますので、私のケースは参考程度としてください。
下記からは、LPIC102試験合格のための、おすすめの参考書、問題集や、私が行った勉強方法について説明します。
LPIC102のおすすめ参考書
Linux教科書 LPICレベル1 Version5.0対応
通称「あずき本」と呼ばれるLinuxの教科書であり、LPICを提供する「LPI日本支部の認定テキスト」です。LPICの出題範囲をカバーしており、知識を一通り学べる教科書だと思います。
値段は3,800円(税抜き)で少々高いですが、記載されている「試験直前チェックシート」と、「模擬試験」は非常に役に立ったと思っています。
私はコマ門(記述式)対策を全く行っていませんでしたが、あずき本の「試験直前チェックシート」に記載ある内容で、コマ門対策ができたと思っています。
また、模擬試験も本試験と難易度も近しく、模擬試験の問題数は多くはないですが、本試験で同じような問題が、私の時には4-5問ほど出題されていました。
正直、「あずき本」はなくても、未経験でもLPIC102試験は問題なく合格はできると思いますが、「理解スピードを早めたい」、「実際の試験レベルの問題を、少しでも多く解きたい」という方には向いている本だと思います。
あずき本を買う程ではなく、わからない部分の理解を進めるために「無料の参考書を探している」という方は、下記のLinuCイージスで、無料で勉強をするのも良いと思います。
LinuCイージス
※LinuCイージス:https://www.infraexpert.com/infra/study10.html
LinuCイージスはLinuC試験の内容ですが、LPICとLinuCの問題は基本同じですので、LinuCイージスですと無料で勉強が可能です。私は、LPIC102のネットワークとセキュリティで、あずき本を読んでもよくわからなかった箇所がありましたので、LinuCイージスで理解の補足をしました。
ただし、試験範囲が多少変わる事がありますので、LinuCイージスで勉強をする際には、LPIC運営LPIのwebサイトを確かめながら勉強するとよいと思います。
※LPI 102試験範囲:https://learning.lpi.org/ja/learning-materials/102-500/
LPIC102のおすすめ問題集
おすすめの問題集は、下記の2つ(Ping-tとスピードマスター)です。下記2つがあれば、スムーズにLPIC102に合格できると思います。
Ping-t
Ping-tは、LPICなどのIT資格を勉強できるweb問題集であり、実際Ping-tを使ってLPICを受験する人は圧倒的に多く、Ping-tだけでLPIC level1に合格する人も多く、web問題集の中では一番メジャーといえると思います。
ただし、難易度はやさしい内容から難しい内容まで様々であり、あまり出題されないような問題も相応含まれるため(Ping-tのLPIC102試験の問題は、計520問ほどあります)、基本的には「試験範囲の基本を学ぶ」という観点だと非常によい教材だと思います。
また、Ping-tの問題の中で、「出題されやすい問題を絞りたい(見つけたい)」という考えであれば、LPIC運営元のLPI日本支部の公式サイトの「主な知識分野」と「用語とユーティリティ」の内容と照らし合わせて、記載がある内容を重点的に勉強すると、効率的に勉強できると思います(「主な知識分野」と「用語とユーティリティ」以外の内容も一部出題がありますが、高頻度で出題されやすいかと思います)。
例えば、トピック105.1の「シェル環境をカスタマイズして使用する」であれば、公式サイトの「主な知識分野」と「用語とユーティリティ」は下記となります。
■主な知識分野
- ログイン時や新しいシェルの作成時に環境変数(PATHなど)を設定する。
- 頻繁に使用されるコマンドシーケンスのためのBash関数の作成。
- 新しいユーザーアカウントのスケルトンディレクトリを維持する。
- 適切なディレクトリでコマンド検索パスを設定する。
■用語とユーティリティ
- .
- source
- /etc/bash.bashrc
- /etc/profile
- env
- export
- set
- unset
- ~/.bash_profile
- ~/.bash_login
- ~/.profile
- ~/.bashrc
- ~/.bash_logout
- function
- alias
https://learning.lpi.org/ja/learning-materials/102-500/105/105.1/
上記は頻出分野ではないかと思いますし、「用語とユーティリティ」の部分は、コマ門対策になるとも思います。
また費用は、1ヵ月で2,400円(税込み)、2ヵ月で3,200円(税込み)で利用できます。
Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集 Version5.0対応
通称白本と呼ばれる問題集であり、難易度は少々高く、本試験の内容よりも難しいくらいだと思います。ただし、本試験レベルに慣れる必要もあると思いますし、的中率も非常に高いので、問題集の重要度の★★~★★★だけは、2回程度はやるべきかと思います(白本の問題に慣れておけば、本試験は簡単に感じるかもしれません)。
また、個人的な印象として、短期間で効率よくLPICに合格したいのであれば、白本(スピートマスター)は使った方がよい問題集だと思います。
下記からは私が実施したLPIC102の勉強法を記載します。
LPIC102の勉強法
私は44時間(12日間)の時間を使って、おおよそ下記で勉強をすすめました。
■すすめ方:
・Ping-tの問題の解説のポイントを、ノートに書いてまとめる
・Ping-tの解説を読んでも、よくわからない所を、あずき本で理解
・まとめたノートを読む、覚えていない所を、再度メモ書きに書いて覚える
・あずき本の「試験直前チェックシート」と「模擬試験」、スピードマスターの「問題の重要度★★と★★★」を解く
※Ping-tのコマ門(記述問題)は、やっていません
私は市販のノートを使いましたが、PCやスマホなどを使ってもよいとは思います。ただ、私の場合は、「手を動かして書かないと、暗記ができないタイプ」だと思っていたので、私はとにかく書いて覚えていました。
作ったノートは、下記のような感じです。
※「自分が作ったノートの内容を覚えれば、絶対に合格する(試験内容の7~8割は、ノートから出題される)」と思いながらノートを作っており、102試験のみで40ページでした。
また、おおよそ使った時間としては、下記になると思います。
あずき本:8時間程度
Ping-t:26時間程度
スピードマスター:10時間程度
あわせて、個人的な所感ですが、101試験(720点)よりも102試験(590点)の方が点数が下がった理由は、「102試験は、Ping-tの問題をあまりやらなかった(Ping-tで作ったノートだけで、ほぼ完結させた)」ためだと考えています。しっかりとした得点を狙うのであれば、Ping-tを周回した方がよかったと思います。
LPIC102の勉強法を振り返る
再度私がLPIC102を受験するとするのであれば、試験勉強は「あずき本」、「Ping-t」、「スピードマスター」の3つを使うと思います(この3つの組み合わせが、最短で合格できると考えています)。
また、あずき本にも、Ping-tにも、スピードマスターにもメリットデメリットはあると思いますが、特に下記が大きなメリットだったと感じています。
・あずき本:
全体の理解が深まったのも事実ですが、「試験直前チェックシート」と「模擬試験」はとても有益でした。特に、「試験直前チェックシート」を覚えておけば、Ping-tのコマ門を使わなくても問題ないと考えました。
・Ping-t:
Ping-tの解説をノートにまとめることで、基本的な知識を広くカバーすることができたと考えており、試験対策として非常に役に立ちました。
・スピードマスター:
本試験のレベルに慣れることができかつ、私の場合は、スピードマスターの内容と同じもしくはほぼ近しい問題が、102の本試験でも2割くらい出題があり、2回くらい問題を解いておくだけでも有益だと考えました。
また、102試験を振り返って考えると、私の場合は「101試験で、50時間の勉強で720点だったから、少しすくなめの勉強でもいいかな」と慢心してしまった所があり、結果101試験よりも見た事がないような問題が多く出題されたため、もう少し問題慣れしておいた方がよかったと感じています。
あわせて、LPIC level1の勉強方法の全体感については、別記事ですが、「【勉強体験記】LPIC Level1に1ヶ月弱で初心者が合格した勉強方法」に記載しておりますので、興味があれば、あわせてお読みください。
さいごに
LPIC102は、初級IT試験ではありますが、未経験者には相応難しい試験だとも思います。LPIC101と同様、「絶対に合格する」と決め、「1日、週に何時間勉強する」と決めて試験に向き合わないと、少々大変な所ではあると思います。
ただし、勉強をすれば、未経験者でも、暗記が苦手な人でも、合格できる試験だと思いますので、LPIC102受験者の方の参考となれば幸いです。
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