こんにちは、インフラ系エンジニア専門の転職エージェントの中の人です。
SNSや掲示板では「運用保守はきつい」、「スキルがつかない」、「やめとけ」といった声をよく見かけます。
一見すると「安定している仕事」に見えますが、実際には 定型作業の繰り返しや、裁量の少なさに悩む人が多い のも現実です。
特に、運用・保守フェーズに長くいると、「新しい技術に触れられない」、「年収が上がらない」、「このままでいいのか」と感じやすく、キャリア停滞の壁にぶつかるケースが増えています。
しかし、運用保守の経験は決してムダではありません。
サーバー・ネットワーク・クラウドなど、基礎を理解しているからこそ、「脱・手順書エンジニア」として構築・自動化・クラウド領域へ進む道は十分に開かれています。
この記事では、ITインフラ専門のエージェントが、
以下の3つの観点から、運用保守の経験を活かしキャリアを転換させるための戦略を徹底解説します。
■この記事でわかること:
・なぜ「きつい」と言われるのか
・なぜスキルが伸びにくいのか
・どうすればキャリアを変えられるのか
「今のままでは将来が不安」、「スキルを活かしてキャリアを変えたい」と感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事では、主に「運用保守(構築・設計を含まない運用フェーズ)」のキャリアに焦点を当てています。夜勤や監視業務(24/365体制)を中心に担当している方は、以下関連記事をご覧ください。
→関連記事:運用監視オペレーターはやめとけ?年収・将来性・脱出ロードマップを徹底解説
また、インフラエンジニア全体の仕事内容やキャリアの全体像を知りたい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
→関連記事:インフラエンジニアとは?仕事内容・スキル・資格・年収・将来性を徹底解説
運用保守が「きつい・報われない」と言われる3つの理由
運用保守の仕事は、ITインフラを安定稼働させるうえで欠かせない重要なポジションです。
しかし現場では「責任は重いのに評価されにくい、」「同じ作業ばかりで成長を感じられない」といった声が多く、やりがいを見失う人も少なくありません。
ここでは、そんな「きつい」、「報われない」と言われる理由を、現場構造の視点から整理していきます。
トラブル対応時のプレッシャーが大きい
普段は手順書どおりに作業するだけでも、ひとたびシステム障害が発生すると一気に緊張感が高まります。
影響範囲の確認、一次切り分け、報告、復旧対応など、スピードと正確さが求められ、常に「止めてはいけない」というプレッシャーの中で動く必要が出てきます。
しかし、根本原因の分析や恒久対応の設計といった「本質的な改善」は、上流チームやベンダー側の担当となるケースも多く、「責任は重いのに、裁量がない」という構造的な悩みを感じる人も多いです。
実際に、努力しても評価されにくく、精神的な疲弊だけが残ってしまう、、これが「運用保守は報われない」と言われる背景のひとつです。
要約:
障害対応は責任が重く緊張感がある一方で、裁量が少なく、やりがいを感じにくい構造になっている。
定型業務中心でスキルが積み上がりにくい
多くの運用保守現場では、「手順書に従って正確に処理すること」が最も評価されます。そのため、自分で設計意図を考えたり、環境を改善したりする機会がないことも多いです。
「サーバー再起動」、「アカウント登録」、「ログ監視」などといったルーチンワークが中心になり、1年後も3年後も業務内容が変わらない状況に「成長実感のなさ」を感じる人は少なくありません。
特に、構築経験がないまま長期間このフェーズにいると、「設計・構築募集では応募できない」、「スキルシートに書ける実績がない」といった壁にも直面します。
学んでいるのに前に進めない、そんなジレンマが「スキルがつかない」と言われる最大の理由です。
要約:
定型業務が多く、自ら考える機会が少ないため、スキルが積み上がらず、キャリアの天井に早くぶつかりやすい。
40代以降のキャリアパスが見えない不安
運用保守は若手の入り口としては重要なポジションですが、長く続けるほど「次に進む道」が見えにくくなります。
構築・設計フェーズに進むには新たな知識が必要で、年齢を重ねるほど「実務未経験」扱いになりがちです。
さらに、クラウドや自動化(IaC)の普及により、手動運用の領域は縮小しつつあります。
その結果、40代以降でも現場常駐や夜間対応を続けるケースが増え、「このままでは置いていかれる」という不安を感じる人が少なくありません。
しかし、これは「年齢の問題」ではなく、「スキル変化に対応できる環境が少ない」ことが原因です。詳細は後述しますが、適切な学習と環境選びによって、この停滞を抜け出すことは十分に可能です。
要約:
年齢が上がるほど構築・クラウド領域に進みにくくなり、将来の不安を抱えやすいが、方向転換はまだ可能。
■まとめ:運用保守が「きつい」と言われる理由:
・責任は重いが、裁量が少ない
・ルーチンワークが多く、成長実感が乏しい
・キャリアの見通しが立ちにくい
これらはすべて「個人の努力不足」ではなく、構造的にスキルが伸びにくい環境によって発生しています。
以下からは、この「構造的な壁」をもう少し深く掘り下げていきます。
なぜスキルがつかないのか?構造的な3つの壁
運用保守は「現場で経験を積めば、自然とスキルが身につく」と思われがちですが、実際にはそうなりにくい仕組みも存在します。
ここでは、キャリア停滞を生むありがちな「3つの構造的な壁」を説明していきます。
判断権限が上流にあり、思考が育たない
運用保守現場では、設計・構築チームが作成したシステムを「運用する立場」として関わることが多く、判断の権限が上流側に集中しています。
ゆえにトラブル対応時も、「手順書に沿って一次切り分け」、「異常を報告してエスカレーション」で完結するケースがほとんどです。
そのため、「なぜその設定なのか」、「どうすれば根本的に防げるのか」といった設計の意図を考える機会がに少ないのが実情です。
結果として、自分で考える習慣が育たず、「手順をこなすだけの仕事」に陥りやすくなりがちです。
要約:
判断権限が上流に集中しており、自分で考え改善する余地が少なく、思考力が育ちにくい。
自動化・クラウド化で担当領域が縮小している
近年は、クラウド基盤やIaC(Infrastructure as Code)などの普及により、従来の「手動運用」の領域が減少しています。
またシェルスクリプトや自動化ツール(Ansible、Terraformなど)によって、人的オペレーションは最小限にもなりつつあります。
結果として、以前は経験として積めた「バックアップ作業」、「ジョブ管理」、「設定変更」といった運用工程の多くが、ツール任せで「触る機会」自体が減っている状況があります。
現場の安定度は高まる一方で、個人の技術スキルの伸び代は小さくなり、「この仕事は5年後に残っているのか」という不安を感じる人が増えています。
要約:
自動化とクラウド化の進展で、手動運用の経験が積みにくくなり、技術成長のチャンスが減っている。
時間的余裕がなく、学習習慣が築けない
「勉強しようと思っても、時間がない、、」と感じている人も多いでしょう。
特に障害対応や突発的な呼び出しなどが多い環境では、学習のリズムを保つこと自体が難しいのが現実です。
現場では「まずは稼働を止めないこと」が最優先で、落ち着いた時間に学びを継続する仕組みが整っていないことも少なくありません。
その結果、学びたい気持ちはあっても行動に移せず、「気づけば、数年同じ業務のまま」という状況に陥りやすいとも言えます。
■まとめ:スキルが伸びにくい理由
・権限がなく、自分で考える余地が少ない
・手動作業が減り、経験を積む機会が少ない
・学習の時間も確保しづらい
これらの壁は、個人の努力だけでは超えにくい「構造的課題」と言えます。次からは、この壁を突破するための具体的なキャリアのルートを紹介していきます。
運用保守から抜け出す3つのキャリアルート
「このまま運用保守を続けても成長できないのでは?」、そう感じたときに、どんなキャリアの方向性があるのでしょうか。
実は、運用保守の経験を活かせる道は大きく3つあります。ここでは、スキルの親和性が高い順に、代表的なキャリアルートを紹介します。
運用設計・運用管理職へ進む(最も近いステップ)
運用保守の経験を最も活かしやすいステップアップが「運用設計・運用管理」への転向です。
現場で手順を実行する側から、「運用の仕組みを作る・整える側」にまわるポジションです。
■運用設計・運用管理の業務:
・システム安定稼働のためのフレームワーク設計・整備
・障害対応手順や運用ドキュメントの整備
・外部ベンダーやメンバーへの作業指示・調整
この分野は「現場を理解している人」が特に重宝されます。また、ITILなどの運用管理フレームワークを学ぶことで、評価基準や改善手法が体系的に理解できるようになります。
「現場をより良くしたい」、「仕組みを整えるのが得意」という方に最適なキャリアです。
要約:
運用保守経験をそのまま活かし、「現場を回す側」から「整える側」にキャリアシフト。最も近いかつ目指しやすいキャリアアップルート。
構築・設計フェーズに進む(技術力を磨くステップ)
2つ目のキャリアルートは「構築・設計フェーズ」へのステップアップです。
サーバー・ネットワーク・ミドルウェアなどの環境を、自ら構築・設定していくフェーズで、運用保守で培った障害対応力・監視設計力・トラブルシューティング力が活かせます。
最初は先輩エンジニアの指示のもとで環境を構築したり、テスト環境で設定を試すことからスタートできます。
徐々に設計書の読み方を覚え、やがて自分で構成を考える段階へと進んでいきます。
構築工程では、実機操作やネットワーク設定を通じて「動くインフラ」を作る達成感を得られます。
また、運用保守よりも年収レンジが一段上がる傾向にあり、400万円台 → 600万円前後を狙う人も多いです。
要約:
運用経験を土台に、実践を通じて技術を伸ばせるフェーズ。手を動かして覚えるタイプに向くキャリアです。
構築・クラウド領域に進めば、実際に年収が上がるケースも多く見られます。実際の職種別データを以下で確認してみましょう。
関連記事:高年収を狙える職種の年収相場
→関連記事:インフラエンジニアの年収相場と上げ方|工程別・年代別に1000万円を狙う戦略
→関連記事:クラウドエンジニアの年収まとめ|AWS・Azure時代の市場価値とは
→関連記事:AWSエンジニアの年収相場と上げ方|資格・経験別レンジと脱SES戦略
クラウド・自動化エンジニアに転向する(将来性の高いステップ)
3つ目は、将来性・年収の両面で注目度が高い「クラウド・自動化」領域です。
AWSやAzure、GCPなどのクラウドサービスは、今や企業インフラの主流と言えます。さらに、AnsibleやTerraformといったIaC(Infrastructure as Code)ツールの普及で、自動化スキルの需要も急増しています。
クラウド運用では、物理機器の制約がなく、学習環境を自分で構築しやすいのが大きなメリットです。
また、運用保守で培った「安定稼働」、「監視設計」、「障害対応」の知見は、クラウドでもそのまま活かせます。
学ぶ分野は広いですが、そのぶん年収アップ・将来性・キャリア自由度のすべてが大きく伸びます。
要約:
クラウドと自動化の波に乗る次世代キャリア。学習量が必要だが、成長余地とリターンが最大。
AIや自動化が進む中でも、インフラエンジニアのスキルを活かせる分野は確実にあります。将来性を重視したキャリア設計を考える方は、以下の関連記事も参考にしてください。
職種別の将来性記事
→関連記事:インフラエンジニアの将来性はある?AI時代の需要・キャリアを徹底解説
→関連記事:クラウドエンジニアの将来性|AI時代に求められるスキルとは
→関連記事:AWSエンジニアの将来性|今後も需要が続く理由を解説
キャリアルート比較表
| キャリアルート | 難易度 | 年収目安 | 活かせる経験 | 学ぶべき分野 | 向いている人 |
| 運用設計・運用管理 | ★★☆☆☆ | 〜650万円 | 障害分析・改善提案・標準化 | ITIL/監視設計/運用改善 | 改善・調整が得意な人 |
| 構築・設計 | ★★★☆☆ | 〜600万円 | 障害対応・設定変更 | LPIC/CCNA/Linux構築 | 実機で学ぶのが好きな人 |
| クラウド・自動化 | ★★★★☆ | 〜750万円 | 運用改善・スクリプト | AWS/Python/IaC | 新技術・自動化に興味がある人 |
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※オンライン面談OK・在職中の方も歓迎です。
今日から始められるキャリア転換の3ステップ
「運用保守から抜け出したい」と思っても、何から始めればいいのか分からない、、と考える人は多いのではないでしょうか。
ここでは、忙しいエンジニアでも今日から取り組める、現実的なキャリア転換の3ステップを紹介します。
自分のスキルと業務範囲を整理する
まずは、自分が日々どんな業務をしているのかを棚卸ししましょう。
担当しているOSやミドルウェア、監視ツール、障害対応の内容など、「できること」ではなく「やっていること」を書き出すのがポイントです。
次に、それらを「運用」、「構築」、「設計」、「自動化」などのカテゴリに分類すると、自分がどのフェーズのスキルを持っているのかが明確になり、面接時に「業務内容を具体的に説明できる」ようになります。
ポイント:
スキルの棚卸しは「転職活動の最初の武器」です。自分の実務スキルを正確に把握することで、構築・設計への転向チャンスが見えていきます。
構築スキルを伸ばすための学習を始める
スキルの棚卸しが終わったら、構築フェーズで必要な技術を少しずつ学んでいきましょう。
最初のおすすめは以下の3ステップです。
■構築スキルを伸ばす学習:
・LPIC-1またはCCNAで基礎固め
→ Linuxやネットワークの基本構成を理解することで、運用経験の知識が整理されます。
・AWSやAzureのクラウド基礎に触れる
→ 実機を使わずに、ブラウザ上で構築・検証が可能です。
・Ping-t/Udemy/YouTube教材を活用
→ スキマ時間に反復学習できるため、継続しやすい環境を整えましょう。
特に、運用保守から構築へのステップアップでは「基礎+演習」の繰り返しが最重要です。
ポイント:
完璧を目指す必要はありません。1日30分でも「手を動かして学ぶ」ことで、運用型から構築型の思考へと変わり始めます。
このような場合は、対策例として、現場での改善提案や、自動化スクリプト作成にチャレンジするなどで、スキルの幅を広げられます。
資格+演習で「できる」を可視化する
後は、スキルを「形にする」段階です。資格はあくまで通過点ですが、転職活動では「客観的な実力証明」として非常に有効です。
たとえば、LPIC-2やAWS SAAなどを取得できれば、構築やクラウドポジションへの応募資格が一気に広がっていきます。
また、演習環境(AWS無料枠/VirtualBox/Cisco Packet Tracerなど)を使って、実際に構築を試し、設定やトラブル対応を体験しておくことが大切です。
加えて、試験勉強で使った教材や自分で構築した内容を、簡単なメモや手順書としてまとめておくと、面接で「何をどこまで理解しているか」を具体的に説明しやすくなります。
この「言語化できる学習」は、スキルを証明する一番の材料です。
ポイント:
資格は目的ではなく、「スキルを可視化するツール」です。手を動かしながら学び、説明できる状態を目指すことで、採用担当者からの信頼が高まります。
まとめ:「やめとけ」ではなく「活かして伸ばす」
「運用保守はやめとけ」と言われるのは、仕事そのものが悪いからではありません。
多くの人が、スキルが伸びにくい環境構造の中で、成長実感を得られずに悩んでいるためです。
実際ルーチン作業が多く、上流との距離もある現場では、「自分の判断が反映されない」、また「キャリアの先が見えない」とも感じやすいでしょう。
一方で、そこで積み上げた運用知識や障害対応の経験は、構築・設計・クラウドへ進むうえでの大きな武器になります。
また、運用保守の経験を活かしてステップアップするには、以下の3点を意識して行動することが大切です。
■運用保守からのステップアップのポイント:
・スキルを棚卸しして現状を見える化する
・構築・クラウド領域の基礎を学び始める
・資格や演習で「できる」を証明する
小さな一歩でも、継続すれば必ずキャリアは変わっていきます。
「やめる」よりも「活かして伸ばす」選択をしていきましょう。
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インフラ専門エージェントが、あなたの経験をもとに、
「運用設計・構築・クラウド」など最適なキャリアプランをご提案します。
※オンライン面談OK・在職中の方も歓迎です。
ここまで読んで「他の職種はどうなの?」と感じた方は、以下の関連記事で、現場ごとのリアルを比較してみましょう。
関連記事:職種別「やめとけ」比較まとめ
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職種ごとの仕事内容やキャリア全体像を体系的に整理したい方は、以下の関連記事も参考にしてください。
関連記事:インフラエンジニア職種マップ&主要職種まとめ
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